Tenkara Strategies

Index

Tenkaraまでの経緯:

10年ほど前、丹沢の小渓流に魅かれてFly Fishing、Lure Fishingをと思ったがWestern Styleは丹沢の小渓流においてはオーバースペックであると考え、シンプルなTenkaraに傾倒. 丹沢、伊豆、富士山周辺、長野を中心に小渓流のTenkara Fishingにはまる. 目的は上流の日向で一匹と遊んで撮影することができる都心からほど近い非漁協放流域の沢巡りとなっていた. 求めていたのは都会のビジネスから離れた太陽、水、木と渓魚だから、あまり釣れなくても非漁協放流域の上流は私から見たらハマリ役であった. 綺麗な水、植林でない自然林のある渓流、Nativeな1匹を求めて結構な年数、Tenkaraを振り続けたが次第にシンプルなだけにTenkataの足りないところ、カストマイズしたいところ、理に合わないところも多いことに気付いた. 日本の伝統的な釣りであり、ひとつのアイデンティであるから良いものを継承し、進化すべきものとしてここ数年、発展系のTenkara手法を求め思考錯誤釣行してきた経緯がある. 

 

尚、以下の内容に関し固持するものではなく、客観的論理と実践的データにより変更あるいは是正されることを筆者として望むものである.

 

Tenkaraの今後とあるべき姿:

個々の職業漁師の知恵と経験という原点からの継承をベースにレクリエーション、ゲーム、スポーツとして、今後の環境にあった快適なTenkara Fly Fishingとなることが正論だろう。. Tenkaraというマイナーだが優れた日本の伝統的な釣法が身近で便利なものとして一般に広く楽しまれることを目的としたい. 現在では欧米のほうが日本の古典的なTenkara釣法として、ビジネス、ネットワーク情報化、研究整理、理論的解析の面で何年も先にいるという現状を追記しておく. 今後日本で行うべきことは、優れた製品技術で新しい発展系のTenkara systemを形成し、ビジネス化すること、また日本の渓流環境を「マトモに釣りができる」ものにすることだろう。経済論理が成り立たなければ発展は望めない. 現在の日本のtenkataのマイナーぶりを見れば自明の理である. マイナーであることを固持、テコにして閉じた世界、ビジネスをすることは将来的のためにならない.

 

 「新しい発展系のTenkara systemの形成」とは

  ・Tenkara systemの機能の適正化(=Simpleだが十分に渓流ゲーム対応ができる機能確立)

 ・職業漁師の釣りから快適に楽しむための機能化(=経済効果からリラクゼーションのための機能化)

 

 

Tenkaraの定義

Tenkara というネーミングがよくその起源について問われ不明だと言われている. 憶測はいくつか紹介されているが解らないままだ. これではTenkaraの定義はできないことになってしまうので新たにここで設定したい. 先人の憶測のなかから「天から」というのがあるが、Tenkaraを考察してきた経験知、暗黙知、また理論知からこの「天から」というのが最も相応しいと考える.

 

このネーミングが理にかなっているというのは以下のことから類推した.

・てんからは、Lineを水面に浸けず毛バリからフワッと「天から」から落とすのが基本だし、自然だろう.

・Lineが短いから悟られまいと岩陰、岩の上からフワッと「天から」落として魚の側線と視覚を刺激しないようにする.

・自然において水面に対し鋭角的に突入する餌は少なく、魚にとって警戒要因となるから「天から」フワッと落とす.

・Sight fishingの至近距離においてLineで水面を打てば魚は散るし、通常はそういうことをする必要もないから「天から」フワッと落とす.

・基本的に魚は「天から」フワッと落ちてくる虫、あるいはフワッと落ちて水面か水面直下を自然に流れた虫を捕食している時期が長い.

・重い毛バリの場合も「天から」自由落下により水中深く沈み自然に流れるほうがいいだろう.

 

このように、特殊な方法、時期、条件を除き、フワッと「天から」Kebariを落とすというノウハウがキーとなることから「天から」がTenkataのネーミングの起源であり、釣り方、論理の基本であるとここに定義づける.

 

  1. ネーミング:

     天から釣り=Tenkara Fly Fishing

 

  2. 定義: 

       自然界の動作の再現として、シンプルな竿、ライン、ハリスを用い、Kebariを「天から」落として、水面あるいは水面下で自然に流し、その動きで渓魚を欺い

    て釣ることを効率的に人の知力と身体機能をフル活用して行うこと.

 

Tenkaraの課題と対応

随分、理屈っぽい定義だが、今後のTenkaraを進化させる重要な要素がたくさん含まれている.実は現在までのTenkaraの機能はこれらを十分満足していない. Tenkaraの本質的な限界やTPOもあるが、Tenkaraは「凄い!」、「釣れない」、「難しい」、「簡単」、「面白い」、「疲れる」といわれるように、さまざまに評価がバラツイているという課題から、伝承のTenkaraという継承されたもののうえに論理・手法や機能を適正化し、さらに進化させる必要があると考える, ただし、上の定義に基づいてあくまでもSimpleに. さもないとWestern FFやLure fishing、果てはBait fishingの模倣になってしまう。日本の文化として、対峙する魚に対して忍者のようにSimple & Cleverであり、侍の餌釣りでもCowboy文化でもないものでなくては意味がない.

 

ではどうすればよいかを表にした。

 

従来のTenkaraの課題 追加機能 ソリューション
1

バックキャストがコンパクトにしにくい

 (被った渓流、障害物でキャストできず)

→ラインの可変

 

RodのInter-line化とライン長調整機能

 

2 細かく毛バリを動かすバリエーションが少ない
3 Sight Fishingの楽しみが薄い →毛バリのバリエーション(Dry)の追加

毛バリの対応バリエーション基準の設定

 (サイズ、重さ、カラーのマトリックス)

4

季節など諸条件により深場に手が届かない、

→毛バリのバリエーション(Weight)の追加
5 バラエティな楽しみ、ビジネス性の欠如 →毛バリのバリエーション(Color)の追加
6 ラインが仕舞難いので断続遡行に向かない →ラインの収納 Natural Cascade方式か軽量リールの追加
キャストが多いので身体疲労、ミスキャスト →Rod軽量化、高バランス化 メーカー改良(すでに一部製品化)

 

 

                         

Tenkara ソリューション

 

 

 1. Rod のInter-line化

 

  

     ●Type#1: Reel 付 ハエ竿改良(ダイワ早霧ベース)

    

 

            

 

          Line: 3.5-4.0     Leader: 0.4-0.6-0.8

 

 

          

          ●Type#2: Reel 無 (脱着)

 

        

 

 

   

     ●Type#3: Reel 無  ハエ竿改良(ニッシン初梅ベース)  40g超軽量: 上流アマゴ用(大物不向き、管理釣り場のマス不可)

 

       

  

          Inter-line化に改造

 

            Line長さ: グリップエンドから1.5m-2.5m

 

            Line: 3.0-3.5-4.0    Leader: 0.4(Rod折れリスク軽減のため) 

 

 

                Grip取り付け

 

          

 

 *当然ながらこれらのRodは、あくまでstrategicに prototype model として改造流用したものであり、適正なタッククルバランスではない. 

     むしろ、このようなコンセプトで適正なバランス仕様のものを専用に生産すべきであることを示すためのものである.

 

 

2. Kebari selection

 

魚がどんな毛バリを食うかというのは、無数の複合要因の結果だから因果関係を現場で認識し、対応するのは皆無と考える. 世の中の事象は因果関係が単純で分かりやすいものと複合的ですぐには解明できないものがあり、前者は論理的根拠、後者は統計的結果に基づき対応しているわけだから、毛バリ選定にしてもどこまでも細かく考えるのは有効数字ではないだろうし、何の理由も傾向もないとするのも機会の喪失である. このような観点から、代表的な要因と水準項目を設定し、単純化した毛バリを選定するための基本的な基準Matrixを下記のように定義して現場で活用する.

 

●代表要因項目(水準数): 

 毛バリのSize(4レベル)、毛バリのWeight(4レベル)、風の強さ(3レベル)、流れの強さ(3レベル)、活性(3レベル)*  *気温/時間/季節インパクト

 

Matrixの構造: 

 Kebari [Type] = [Size] x [Weight] x [風の強さ] x [流れの強さ] x [活性]    ⇒ Place変更

 

最大公約数的にざっくりSimpleに重要な要因をカバーする手法とした. それでもダメなものは先に進む. 「場」という要因をフラして適正化すると効率があがる. 具体的にMatrixは下記のような概念になる.

ボールドしたように標準は「水面下」の「#12」のnatural colorということになる. この基準を中心にが環境により変化させる最小限のSimpleなPatternと論理を持つことをクラシックな「てんから釣り」に求めようという考えだ. これはこういうFrameworkを設定したものであり、使用する釣り人、国、場所、渓魚そのたによりParameterを変更、適正化しながら使用すべきものだ. 複雑化、単純化し過ぎない限り、要因/水準項目も増減されるのかもしれない.

 

実際の傾向をMatrixに表すと次のようだ.

 

Tenkara Kebari Matrix

 

Wind/Stream

strong  Normal  → weak         

Wind/Stream Kebari Type Kebari Size

Activation

(Temperature/Time/season)

weak

Normal

strong 

Dry #10 #12 #14 #16

high

 

 

 Middle

 

 

low

Surface 

Wet

Wet
Heavy Wet

Activation

(Temperature/Time/season)

high   ←   Middle    low          

 *基準となるSimpleな論理フレームを認識することにより現場での混乱や機会喪失から良化傾向をつかむためのものである.

 

 

 

 

 

 

Fishing Analysis                                            * Impact Levels on hooking performance basis by Factor

 釣果があった状況、条件を整理しておいて、釣果のパターン認識を明確にしておくことにより釣果の確率を上げる。(小渓流におけるヤマメ/アマゴ対象)

 

Factor 1

Factor 2 Impact

Level

Impact Note

 

Drug

Line/reader lengths A

スムーズに毛鉤から着水できる長さとバランスが最重要. その範囲でハリスは長い方が自由度が増す.

Line/reader weight

流れに対し角度(クロスS)があればあるほどライン荷重方向に不利。上流側へラインを傾けるとドラグの軽減になる。流れ方向(アップS)の場合は、有利だが、毛鉤の速度とラインのたるみ調整が必要
Kebari weight 重いとドラグ方向に対し有利、軽いのはラインの重さの影響を受けやすい
Casting side 流れ方向(アップS)は毛鉤の速度調整のみで有利、角度があると流れ方向への毛鉤の保持がしにくい
Casting 竿の高さの保持 AAA 自然な流れ方向の維持、腕の送り出しも必要
Wind AAA 流れの緩いときの向かい風は絶望的、追い風は毛鉤の流速調整で有利
Stream speed 流れがある程度は速いほうがドラグに対しては有利. アマゴは早くてもでる. 

Kebari

Weight AAA 水面、水面直下、水面下、シンキング四種類のTPO使い分けは必須. 飛びやすさも考慮.

Color

AAA

黒・茶系の自然色中心が対応幅が広い.  白、シマシマはアピール度が高い. 基本的に赤、オレンジ、黄色などはヤマメ、アマゴに対して警戒心を持たせるので後手にする.
Type AA 流れが遅いところでは特に寄与率は上がる。巻きすぎは警戒心となる. テール付きのほうが反応がいい場合が多い. シンプルな方がオールマイティ.
Material feeling ソフトな感触が食いつき良さそうなど有意差がありそう。吐き出させないスムーズさが有利。
Flavor B 物の本によると匂いも感じるらしい。 
Casting Flowing lengths 狙ったポイントの深さに速やかに送り込める最短の長さが有利。見せすぎず送り込みたい.
Flowing speed 流速に同期させるため、深さによって流す速度を調整。風やドラグの影響があるのでそのまま流すのは不利。
Flowing position AA 流れ方向を保持する必要がある。
Flowing depth AAA 魚の活性により興味をもつ位置を探る。水面、水面直下、シンキングで反応が異なる。

Approach

Footsteps AAA 渓流に対する振動音は、魚の警戒状態をつくる。
Sense(影、草木など) AAA 影を落としたり、草木ゆれなどの気配は禁物。 餌や外敵(鳥)へ常に空中を意識している。
Sight(体、竿、ライン、ハリス) AA キャステイングするまで何も見せない。竿先、ラインの色、ハリスの太さなど空中にも視覚が届いている。
Ripple波紋 AA 立ち込みは不利。風もなく、流速の緩いところはなおさら。逃げ水を釣るようなもの。

Kebari landing 着水

ソフトに着水した方がいいとき、「ポン」とタイミング良く入った方がいいとき、いろいろありそうだが着水直後に食うことが多い。
Weather

 

Weather(雨、増水、渇水、晴天 風) AAA 快晴、無風、高温、低温などは不利。増水の落ち着いた後や小雨などちょうど良く変化したときは有利.
 Water Temperature 水温 AAA 低温の深場や岩の中は難しい。 温度がちょうど良く変化したときは有利(冬場温度が上がるとき、夏場温度が下がるときなど) 寒い季節、日向の浅い溜まり狙いなど水温を考慮.

Fish type

Native or Farmed AA ネイテイブ化した魚は源流のネイティブ以上に警戒心が強い。放流残りのスレた魚は時間にならないと食いにくい.
Point

隠れ場・捕食

魚を目視確認。大きい岩や下岩など隠れ場所のある捕食し易い流れは釣果が高い。2流ポイントのちょっとした隠れ場所のある流れが竿抜けの場合も多い.
渓相 AA 本流などで活性が低いときは、どこに魚の溜まり場があるかがポイント. 無機的な綺麗な渓流より有機物を含みそうな、苔むしたところの方が確率高い.
岩などの色 AA 水(台風など災害)で洗われた綺麗な岩が多いところより、コケ蒸した岩、黒ずんだ岩、有機物質が多そうなところの方が安定して魚が居付いている傾向がある。水温などで活性が低いときはとくに入渓場所はキーとなる。
Native level 放流・未放流 AA 漁協が放流している渓流とそうでない渓流ではまったく釣果、サイズは違う。楽しみ方も異なる。
Time 朝・夕・適水温時・水温上昇時 AAA 季節によるが、朝、夕と適温になったときは活性が上がるのは歴然としている。そういう時間に魚と一緒にいなければボーズかも。 ゴールデンタイムは7:00〜9:00, 2:30〜4:30だ。 あとは夕まずめ。寒い季節は、お昼頃が良く釣れる.

Environment

 

地形 川原が狭い、立ち位置がどうしても魚に見られる、遮蔽物が何もない、どうしても立ち込まなければならない、下流から入渓できない、などはマイナス。無理に下流側から遡行すると逃げ水状態だ. 
AAA 強風や向かい風は釣行し難い。追い風は調整し易くプラスの場合もある。

A

うまくキャステイングできないと, スムーズに着水しないので釣果が落ちる。
日差し AA 逆光反射状態は偏向グラスも役立たずで逆光を避ける位置で釣行。

   Distance

立ち位置

立ち位置はテンカラのリールのような役割. ポイントまでの距離を理想的にする必要がある.

  Water surface

水面の状態 AAA

アマゴ/山女は水面が曇りガラス状態の場所が狙いやすい. 魚から見えず、水面の毛鉤もごまかし易い. 

着水振動 AA 毛鉤が水面を割るときは、重要なポイント。魚の最大関心事。特に着水振動はインパクトあり
空中-着水シルエット AA 水面を割るかどうかを魚は注目している。水面での微細な動きが魚の大きな判断材料

People

先行者 AA 放流のところは時間をおいて、竿抜け狙い. 先行者の釣り方により残るポイントを狙う。餌釣り先行者は根こそぎ傾向はあるが立ち込みは少ない。 ルアーの先行者がいれば釣行変更した方が良い。粘るルアーマンの後にアタリは期待薄だ.   フライFは、先行者としてはOKだが、立ち込みが多いので時間が必要.

同行者

AA

小渓で同行者がいては釣果は期待できない。楽しさを優先するか、離れるかを選択.

 

*筆者としては表中の項目、レベルを更新するまたはされることを望むものである.

 

Index

 

 

inserted by FC2 system